第2巻 賃貸契約紛争を裁判外で解決するための実践知識編
第2章 ADR法による契約書作成の手順
代表理事 小泉賢司
第2章 ADR法による契約書作成の手順(平成24年7月27日寄稿)
前回で、裁判手続きによる不良入居者退去までの法定手続きを総覧しましたが、貸主にとってこれらの裁判闘争は時間と労力、及び費用がかかりとてもお勧めできる手続きではありません。
そこで、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(以下ADR法といいます)により裁判外で実務専門職者により賃貸借契約にかかわる紛争を和解協議により終局的に解決できるよう賃貸借契約を検討することをお勧めします。
この手続きをとるためには、賃貸借契約書末条におきまりの合意管轄条項(紛争を生じたら貸主の住所地を管轄する地方裁判所を1審裁判所とするという定型条項です)を搭載するのではなく、以下の条項を搭載するようご検討ください。
特に賃貸借契約管理を代行委託している不動産事業者にはこの知識を提示し、改定させる必要があります。
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第**条(和解合意)
本契約に関して当事者に争いが生じたときは、当事者は裁判外の民間紛争解決手続きの利用の促進に関する法律に基づき、民間紛争解決手続により解決を図るものとし、当該解決のため一般社団法人日本民事紛争等和解仲介機構に和解判断を依頼し、当該判断を最終のものとしてこれに従うものとする。
2.民間紛争解決手続に関する一切の事項は、一般社団法人日本民事紛争等和解仲介機構(https://www.jacmo.org/)の定める規則によるものとする。
3.前2項による民間紛争解決手続によっても、なお紛争解決に至らず、裁判手続に移行する場合、(当事者の一方)の住所地を管轄する地方裁判所を第1審の管轄裁判所とする。
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以上の条項を契約書に搭載することで、裁判外で不良入居者を速やかに退去させる話し合いが実現できることになります。 しかしながら、話し合いによる解決にとって、重要な点を読者の方は理解する必要があります。次回は、ADR法に基づく話し合いによる紛争解決の極意について講義することとします。
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