JACMO 一般社団法人日本民事紛争等和解仲介機構

JACMOの和解判断事例 平成26年(権調イ)第26902号

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過去の和解判断事例集

過去の和解事例判断集

平成26年(権調イ)第26902号

不動産権利関係調整和解事件

開廷期日:2014年12月24日

和解裁定会議 平成26年12月12日
平成26年(権調イ)第26902号 不動産権利関係調整和解事件
和解会議終結の日 平成26年11月26日


和解裁定

第1.和解申立の概要
◎事件の概要
申立人は、マンション全室一括賃貸借契約(以下サブリース契約という)に基づき、過去10年来当初約定賃料により、借上賃料を支払っていたが、現時点における近傍賃料と比較して割高であり、よって、現行賃料の減額設定により入居者の募集を行わないことには満室運営が不可能であることから、減額家賃により入居者を公募したことを受け、当初約定賃料では、サブリース事業の運営上欠損が生じることから、借上賃料の減額を相手方に対して行ったところ、これを不服としたため、契約当事者双方より、サブリース契約の継続に関する権利調整を行いたいとして申立人が和解仲介を申し立て、これに相手方が応じ和解会議が成立した事例

◎請求の趣旨
現行サブリース契約を継続するにあたり、申立人及び相手方双方が納得できる契約条項に基づく新たな契約書起草依頼、及び本契約書の締結指揮を依頼したい。

◎請求の概要
申立人は、マンション全室一括賃貸借契約(以下サブリース契約という)に基づき、過去10年来当初約定賃料により、借上賃料を支払っていたが、現時点における近傍賃料と比較して割高であり、よって、現行賃料の減額設定により入居者の募集を行わないことには満室運営が不可能であることから、減額家賃により入居者を公募したことを受け、当初約定賃料では、サブリース事業の運営上欠損が生じることから、借上賃料の減額を相手方に対して行ったところ、これを不服としたため、契約続行が不可能となったため、解除して精算合意するか、新たな権利調整条項によるサブリース契約を締結するか、当会へその和解判断を申し立てたもの。

第2.結果
「和解合意」

第3.和解裁定
当事者は、サブリース契約でなく、賃貸契約管理型の一括賃貸借契約としてその要素を変更し、以下の各号に掲げる譲歩条項を搭載した新たな賃貸借契約を締結し本紛争を解決するものとする。
一.契約期間を5年として、新たな契約の義務期間を限定する。
二.新たな契約期間内の借上賃料(以下標準賃料)を、実収賃料額と確定して支払うこと。
三.標準賃料の支払い原資(入居者からの実収賃料)が不足する月については、減額された賃料(以下減算賃料)を支払うことで相手方の支払い負担を猶予すること。
四.標準賃料と、減算賃料の繰越累計額は、新たな契約期間終了時までに適宜に或いは一括して支払うことで精算する。

尚、当会起草指揮による本契約を「賃貸契約管理型マンション一括賃貸借契約」と通称し、別添の通り当会立会のもと締結指揮を行うこととする。

第4.和解裁定の判断

本物件は、平成16年4月1日より、申立人を賃借人、相手方を賃貸人とするいわゆるサブリース契約(以下原契約)により運営され、申立人は平成24年末日まで、自己のサブリース事業収益が悪化しているにも関わらず、その持出負担を顧みず当初約定のサブリース賃料(以下原賃料)を過去10年にわたり滞納なく支払っているものである。
しかしながら、平成26年度にあたり、原契約の更新契約を行うにあたり、これ以上の事業損失を負担できないことから、近傍賃貸市場により適正に設定され、現在入居者から収受している実収賃料の範囲内で本事業の収支決算を行うため、その原賃料を減額する必要性を痛感し、相当と判断する家賃減額請求を行ったところ、相手方がこれを不服として契約の更新を拒否していた。更新契約未締結の間においても申立人は減額家賃の支払いを適正に行い、相手方もこれを収受している事実がある。
当会義は、相手方の主張の本旨は、原賃料に近接する価額を請求するものであることから、本契約締結紛争の解決のため、サブリース事業方式でなく、賃貸契約管理方式にて再契約を締結し、現在90%以上の入居者が確保されている本物件の実収賃料を、差益管理せず、そのまま支払うことで、相手方の希望する借上賃料額に近接する価額を提示することが可能となるほか、この非営利的事業方法の終期を申立人のために確定しなければ公平に反する理由から本条件による新たな契約期間を5年とすることで責任期間を限定し、当事者双方に譲歩を促すことで当会義が起草する条項による契約締結を指揮するものである。

以上の通り、裁定する。


平成26年12月12日

 
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